能勢・ぎんぶなのうえんでは、フロックス・ドラモンディ’シュガースター'(ハナシノブ科;オープンソース品種)の見頃が始まっています。フロックス・ドラモンディといえば、昔から初夏の花壇の定番としておなじみのイメージがありますが、能勢・ぎんぶなのうえんで栽培している’シュガースター’という品種は、白地に青紫色のクサビ様模様が入る、ちょっとおしゃれな花が咲く矮性品種です。意外と知られていませんが、フロックス・ドラモンディの一部の品種の花には、エキザカムに似た、夏らしい清涼感あふれる独特のフローラル香があります。この’シュガースター’も、そのような芳香がある品種のひとつです。ぜひ、能勢・ぎんぶなのうえんで、夏らしい爽やかな香りをお楽しみください。
フロックス・ドラモンディの栽培技術
身近な草花のイメージで何となく育てていると失敗してしまう、それが、フロックス・ドラモンディという花です。栽培が容易だというのは、育苗が完了した苗を定植後の話であって、育苗にはいくつかの押さえておくべきポイントがあります。
フロックス・ドラモンディは一年草です。温暖地(大阪・神戸・東京・名古屋などの平野部)では春蒔きでも秋蒔きでも栽培できますが、能勢は冬の冷え込みが厳しく、実質的には新潟・福島・仙台と同等の気候と考えたほうがよいですので、春に早めに播種する作型のほうが確実です。能勢・ぎんぶなのうえんでは、できるだけ3月中に春化処理種子を播種することで、できるだけ育苗期間を確保するようにし、2ヶ月程度で草丈15cm前後、茎節数3〜4の苗を育成するようにし、その苗を定植して、現在に至っています。
フロックス・ドラモンディの初期育苗は、根量に限りがあることもあって意外と生育が遅く、心配になるかもしれませんが、そのときの肥培管理が6月の成否を分けます。フロックス・ドラモンディは想像以上に肥料を要求する植物で、しかも、窒素は速効性が重要となります。例えば、窒素肥料として分子態の尿素を施肥した場合には、発芽時点ではまだ気温が低いということもあり、効きが思わしくないほどです。そこで、窒素肥料として、アンモニア態窒素の硫安を施肥したところ、生育は良好でした。この良好な育苗成績には、育苗用土の保肥力も重要で、今年は、CECを最大限に高めた能勢・ぎんぶなのうえんオリジナルのプロ培養土を育苗に使用したことも、硫安施肥と相乗効果を発揮するかたちで奏功しました。
苗が3〜4節に育った時点での摘心も重要です。摘心をしないと、中心の芽が優先的に育ち続け、その結果として、ヒョロヒョロとした倒伏しやすい株にしかなりません。もし、中心の芽に一番花がついていたとしても、その時点で思い切って摘心をすることが重要です。摘心をすると下の節から次々と脇芽が育つと同時に、茎がガッチリと肥大し、倒伏しにくい丈夫な株が形成されるようになります。とくに、肥沃な土壌に定植した後は、成長する脇芽が、育苗期からは想像もつかないくらいに急速に成長するようになり、すぐに花をつけるようになり、それぞれの芽に花芽が形成されて、とても豪華に咲き誇るようになります。とくに定植後の生育途上の時期は、育苗期に続いて多くの肥料を要求しますので、切れ目のない施肥が重要です。このとき、窒素が不足すると、葉が黄色くなったり、生長が遅くなったり、開花能力が低下したりしますので、注意します。定植場所は植物性堆肥・苦土石灰・ようりん(P・K・Mg)を元肥として十分に与えておき、追肥として、硫安や硫酸加里のNK液肥を与えるとよいです。定植後、生育に勢いがついてきたら、その後の栽培管理は容易です。
矮性種のフロックス・ドラモンディは、植え付け直後はやや寂しいものの、コンパクトにまとまるので、庭園の前景に使いやすく、高性の品種や宿根性のパニキュラータ種とはちょっと異なった使い方や魅力があります。おすすめです。
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