5日のNHK趣味の園芸で、お世辞にもおすすめできないクローズドソース品種ばかりが紹介され、本来の園芸のあり方を望む方にとっては、がっかりされたのではないかと思います。種まきのタイミングから考えると、本来なら2〜3月頃にお伝えするのが適期ですが、5日の趣味の園芸でがっかりされた方のために、園芸キャリア40年のほんもののガチ園芸家は、夏秋花壇用の草花、それも、当年開花性がある、初心者にもおすすめの品種を10種紹介します。一年草だけではなく、本来は宿根草・多年草の草花もありますので、品種によっては、かなりお得感もあります。
チトニア・ロツンディフォリア(メキシコヒマワリ)
栽培難易度(目安):★☆☆☆☆(非常に容易)
メキシコ原産のキク科の一年草です。発芽・育苗・定植後の管理のいずれもまったくと言ってよいほどクセがなく、初心者でも非常に容易に栽培できます。生育旺盛で、肥培管理をすると、分枝のうえ、2mを超える大株にもなりますし、切り戻して1m程度に抑えることもできます。ジニアのような派手さはなく、原種らしいナチュラルで素朴な感じもあり、夏から秋を彩るにふさわしい、可愛らしい花です。空き地の景観改善などの用途でも使いやすい草花です。一度植えると、毎年こぼれ種で増え、一年草でありながら、育苗の手間を軽減することもできます。(能勢・ぎんぶなのうえんでは、チトニア・ロツンディフォリアのこぼれ種発芽性を確認しています。)
ジニア・エレガンス(百日草)
栽培難易度(目安):★☆☆☆☆(非常に容易)
チトニアと同じく、メキシコ原産のキク科の一年草です。チトニアと同様に、初心者でも栽培が非常に容易です。チトニアが橙色から赤色の間の花色であるのに対して、ジニアは赤・橙・黄・白・ピンク、さらにライムグリーンまで、非常に多彩なカラーバリエーションがあります。そのうえ、直径2〜3cm程度の小輪咲きから直径10cm前後の見応え抜群の大輪咲きまであり、花の形も、オーソドックスなダリア咲きのほかにも、愛らしいポンポン咲きなども選べます。種子として安価に入手できる品種の多くは、採種継代が可能な固定種であることを確認していますが、F1種や登録品種も販売されていることもあり、このような品種では、生物学的にも法律上も採種ができず(F1の場合、採種しても親の形質が受け継がれず)、当年限りで終了しますので、購入に際しては、固定種であることを確認して購入しましょう。橙色から赤色はチトニアで、チトニアにはない色はジニアで補完する、といったようなカラーバリエーションはいかがでしょうか。チトニアでナチュラル感や愛らしさを演出し、ジニアで華やかさを添えるといった感じです。これだけでも、夏秋花壇は豪華になること間違いなしです。初心者でとにかくボリューム感のあるガーデンを手軽に作りたいという方には、この2種は外せない第一選択肢になるでしょう。
インパティエンス・バルサミナ(ホウセンカ)
栽培難易度(目安):★☆☆☆☆(非常に容易)
熱帯アジア原産のツリフネソウ科の一年草です。インパティエンスといえば、I. ワレリアナ(アフリカホウセンカ)が最近では主流になっていますが、小学校の理科の教材になるほど強健で栽培が容易であることや、アフリカホウセンカよりも発芽・育苗が圧倒的に容易にできること、花も華やかで直立性のため、花壇のアレンジがしやすいことなどから、あえて手軽に栽培できるホウセンカを見直し、ピックアップしました。結実性がよく、採種は容易ですが、属名や花言葉(私に触れないでください)からもご察しのとおり、完熟した果実は僅かな刺激で破裂します。そのため、採種は飛散防止対策を施した採種具や封筒を使用するなどの工夫を行うとよいでしょう。採種が遅れると、種が撒き散らされ、こぼれ種でも繁殖しますが、とくに冬に土が湿潤になり、凍結を繰り返すような場所の場合は、低温時湿潤で種子が死んでしまうことも考えられますので、こぼれ種にはあまり期待せず、採種をしておいたほうが安心です。
ダリア
栽培難易度(目安):★★★☆☆(中程度)
中米(メキシコ、グアテマラなど)の高原地帯が原産のキク科の宿根草です。ダリアは、チトニアやジニアと同じキク科ですが、これら2種にはない魅力は、なんと言っても、塊茎(球根)を掘り上げて、翌年は球根から栽培できる宿根草でありながら、播種から2〜3か月程度で開花が可能な当年開花性があることです。オープンソース品種のダリア種子は、スーパーやホームセンターでも100円台から手軽に入手でき、初心者が園芸で達成感を得るには最良の植物になるでしょう。実生で当年開花性があるオープンソース品種のダリアに限っても、近年では多彩な選択肢があり、好みの咲き方などで選ぶことができるのも嬉しいポイントです。ただ、欠点をあげるとすれば、チトニアやジニアとは違って、結実性はあまりよくなく、採種はしにくいという点と、冬季に凍結する地域では、球根の掘り上げを忘れると、冬季に枯死してしまうおそれがあるということです。育苗の難易度も、チトニアやジニアに比べると上がります。高原地帯の原産ではありますが、ダリアの場合は、耐暑性はさほど心配はありません。ダリアは塊茎植物らしい株の存在感もあり、実生の醍醐味を手軽に存分に味わえますので、初めての宿根草実生に挑戦したい方は、ぜひ選んで挑戦していただきたい植物です。この時期がちょうど播種の適期ですので、播種はお急ぎください。
アルセア・ロゼア(ホリホック)
栽培難易度(目安):★★☆☆☆(容易)
アオイ科の宿根草です。正確な原産地は不詳とされ、学名表記上は原種になっていますが、最近では、トルコ原産種(A. セトサ)と東ヨーロッパ原産種(A. パリダ)の交雑種ではないかとの説が有力とされています。原産地の関係上、耐寒性にも耐暑性にも優れ、栽培しやすい植物です。アルセアの最大の魅力は、その圧倒的な豪華さにあります。高さは1〜2mにも達し、梅雨頃に各節に大輪の花をつけるその姿は圧巻です。種子の発芽も容易です。開花期は夏の花の中ではかなり早く、梅雨頃に開花する特性があります。5月上旬の現在、開花予定株(越年株)はかなりの大きさに成長しているので、この時期に播種すると、翌年の開花を期待したほうがよいかもしれません。一年草扱いされることも多いですが、実際には、体力が弱い株ではないかぎり、ほぼ確実に越冬し、宿根草として育ちますので、一年草扱いはもったいない植物です。宿根草として栽培すれば、毎年、梅雨の見ものとして、ローメンテナンスで楽しませてくれます。
ブロワリア・アメリカーナ(ジャマイカワスレナグサ)
栽培難易度(目安):★★★☆☆(中程度)
中米原産のナス科の常緑性多年草ですが、耐寒性が弱い(越冬温度は5℃以上)一方で、容易に採種でき、発芽・育苗も比較的容易にできるため、日本では、ペチュニアなどと同様に一年草扱いされることが多い植物です。星を引き伸ばしたような形の、青色から白色へのグラデーションが印象的な可愛らしい花をたくさんつけてくれます。7月頃から10月頃まで、長い間楽しませてくれますので、宿根草が主体のナチュラルガーデンの前〜中景に使うとよいでしょう。ちょうど、春の花のエリシマムやリムナンテスの真逆の生育型になりますので、11月頃にこれらの植物に植え替え、採種後の6月頃には、ブロワリアの苗ができあがりますので、一年草ローテーションには使いやすい植物です。ブロワリアは耐暑性が心配されることもありますが、能勢・ぎんぶなのうえんでの昨年の試験栽培では、異例の酷暑でも難なく夏越しし、さすがに夏の花数は少なかったものの、秋には多くの花を咲かせてくれました。草丈は30〜40cmくらいと、コンパクトに収まりますので、使いやすい植物です。採種も行いやすいです。種子はかなり細かいため、播種は丁寧に行う必要があります。
スカビオサ・アトロプルプレア(西洋マツムシソウ)
栽培難易度(目安):★★★★☆(挑戦的)
ヨーロッパなどを原産地とするスイカズラ科(旧マツムシソウ科)の宿根草です。これまでは、高温多湿に弱いと思い込まれていたこともあり、一年草扱いされることが多かったですが、近年の園芸技術(施肥・IPM技術等)の進歩もあり、本来の宿根性を見直す動きが起こっています。施肥技術・IPM技術の実証研究を行っている能勢・ぎんぶなのうえんでも、一部は過酷な環境に負けた株があったものの、能勢・ぎんぶなのうえんで実践している新しい施肥・IPM技術を駆使して頑丈に育った株は、難なく夏越しも冬越しもできることを確認しています。むしろ、これまで一年草扱いされていたことは、今日では、当年開花性という大きなメリットとして捉えられることが多くなり、クナウティアよりも開花に要する期間が短く、栽培難易度も低いため、ナチュラルガーデンに彩りを添える優秀な植物素材として注目されています。播種・育苗は温帯性スイカズラ科植物特有のクセ(種子の休眠性など)があり、活着率(苗収率)はやや低めで、やや育てにくいため、中〜上級者向けの植物といえます。とはいえ、種子も比較的安価で入手できますし、園芸技術の上達を目指すためにも、初心者のステップアップとしても、ぜひ挑戦していただきたい植物です。一見すると、キク科植物に似ているように見えますが、よく見てみると、まったく別物で、キク科植物にはない、スカビオスにしか出せない独特の趣があります。花色のカバー範囲も、青紫・深赤紫(黒)・深赤・ピンク・白と、他種とはあまり被らない独特のバリエーションです。そのため、植物の多様性を感じる中・後景の演出には最適です。とくに石灰や苦土を好みますので、苦土石灰やようりんの施肥は欠かせません。
ポーチュラカ・グランディフローラ(マツバボタン)
栽培難易度(目安):★★☆☆☆(容易)
ブラジル原産のスベリヒユ科の一年草です。最近では、ポーチュラカといえば、一重咲きで葉が薄くて幅広い品種が一般的ですが、昭和の頃は、ここで紹介する、細い多肉質の葉で、八重咲きのマツバボタンが一般的でした。そのため、古くありふれた花という印象があるかもしれませんが、ブラジルの低地に自生する植物は、近年の猛烈な暑さにも負けずによく育つことから、とくに夏を彩る花で見直されています。種子は細かいですが、25℃以上の高温が得られさえすれば、発芽率は良好で、育苗も容易であることから、初心者で夏だけ手軽に使えるグラウンドカバーがほしいという方には、とくにおすすめです。発芽させやすいので、微細種子の播種の練習用としてもおすすめです。種子の販売は、カラーバリエーションが豊富な花色ミックス種子での販売が一般的で、微細種子で種子量も多いため、一袋入手するだけでも、多彩なカラーバリエーションが楽しめるのも魅力です。5月中旬頃までの、まさに今が播種の適期です。和名のとおり、花もよくみてみると、ボタンの花を小さくしたような豪華な花です。花壇の前景に使ったり、斜面や畝の美化・雑草発生抑止、ボールプランター仕立てなど、さまざまな活用法ができるため、苗がたくさん得られても、有効活用がしやすいのも魅力です。結実性も良好で、採種も細かい種子が大量に得られ、容易にできます。
フロックス・ドラモンディ
栽培難易度(目安):★★★☆☆(中程度)
アメリカ合衆国原産のハナシノブ科の一年草です。フロックス属は多くが宿根草(多年草)ですが、ドラモンディ種は、世代寿命が短い一年草です。地下茎を形成せず、パニキュラータ種のような、根元から多数の太い芽が出るようなこともありません。発芽したら、1本の茎が、脇芽で分枝しながら大きくなっていくという典型的な一年草型の育ち方をします。発芽はキク科のチトニアやジニアのように容易に発芽することはなく、同じハナシノブ科のポレモニウムほどではないにしても、ややクセがあります。また、育苗では、かなり多くの肥料を求めますので、育苗では肥培管理と根の生育に注意し、生育が遅れないようにする必要があります。6月頃になると、株の大きさに関係なく、強制的に開花が始まるような生態があるようで、この時点で株が小さいと、夏に枯死しやすい傾向があります。開花株(成熟株)の栽培管理は容易です。
ミモザ・プディカ(オジギソウ)
栽培難易度(目安):★★★☆☆(中程度)
植物なのに敏捷な運動性がある、動物になろうとした植物?として、あまりにも有名な、南米原産のマメ科の常緑性多年草ですが、耐寒性が弱く、播種後数か月で開花能力のある成株に育つことから、日本では一年草扱いされるのが一般的です。動物との共通点をも感じるような、その独特の生態から、これまでに、化学物質が神経の作動に及ぼす影響に関する研究におけるモデル植物として使用されることもありました。食虫植物などと並んで、こどもが植物に関心を持つきっかけとなる植物のひとつでもあります。そのため、こどものあそびばにオジギソウがあると、こどもたちの植物への好奇心を駆り立てる教育的効果も期待できます。ただ、おもしろいからといって、オジギソウに触りすぎると、オジギソウも大量のエネルギーを消費して、株を疲れさせる原因になることも考えられるため、遊びすぎには注意します。(似た動きをする食虫植物のディオネア・ムサイプラ(ハエトリグサ)も同様の注意がなされることが多いです。)
番外編:ダイアンサス・バルバタス(美女なでしこ)
栽培難易度(目安):★★☆☆☆(容易)
5月頃から、甘い香りを漂わせる目を引くカラフルな花を咲かせるナデシコ科の多年草ですが、残念ながら、この植物の花芽分化には、十分な大きさの株で冬の低温にあうことが必要条件になりますので、春蒔きの場合は、当年開花性は期待できません。そのため、番外編での紹介となります。春蒔きの場合、翌年の初夏からは、豪華な花を楽しめますが、最短で咲かせる方法は、8〜9月に冷蔵庫で1週間程度春化処理してからの秋蒔きとなります。この場合も、開花時期は、今蒔いた場合とほぼ同じ時期からになります。
失敗しない栽培のコツを身につける最短コース
能勢・ぎんぶなのうえんの園芸技術研究の成果をかたちにした、能勢・ぎんぶなのうえん特製プロ培養土を使って栽培することです。そのうえで、白粒肥料は使わないで栽培することです。能勢・ぎんぶなのうえんは、市販の既製品培養土の使用は、他力依存と原因究明能力の低下により、園芸技能の上達を妨げることから、おすすめしていませんが、能勢・ぎんぶなのうえん特製プロ培養土は、条件付きでその使用を推奨しています。その条件とは、能勢・ぎんぶなのうえんの園芸農業講座(実地)で、土作りや肥料(植物栄養)の農芸化学を学んでいただくことです。能勢・ぎんぶなのうえん特製プロ培養土は、実際に能勢・ぎんぶなのうえんで業務用培養土として使用しているものと同じで、確実に結果が出せることを、複数種の植物で確認していますが、なぜ好成績が得られるのか、その理論をしっかり学ぶことで、成功する土作りや施肥技術の考え方がしっかりと身につくというわけです。もし、市販の既製品培養土と同じ感覚で。何となくつかっていると、どうでしょうか。同じ成功でも、なぜ成功するのかがわからないままになるでしょう。また、他の培養土を使って失敗していたときに、なぜ失敗したのかがわからないままになるかもしれません。これでは、せっかく結果が出せる培養土をつかっても、真の園芸技術は身につきません。受講生のみなさまに、真の園芸技術を身につけていただくことで、さまざまな種類の植物の栽培に応用していただけるようにし、受講生の園芸世界観(知的植物叢;インテレクチュラル・フローラ)を自創的に豊かにし続ける基礎能力を高めていただきたい、それが、能勢・ぎんぶなのうえんの園芸農業講座の開講理念です。みなさまの受講をお待ちしています。
受講に際しては、まず、銀鮒の里アカウントを取得してください。その後、受講希望の意思をお伝え頂いた方に直接、受講のご案内をさせていただきます。
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