つかない、故障、受信障害…「善意を仇で返されたみたい」頻発するLED照明消費者トラブル【理系詳説】

環境保全(エコ)意識の高まりで急速に普及のLED照明、QOLに影響する落とし穴も

エネルギー浪費の象徴的存在としての白熱電球の生産終了や自粛要請の動きが国内外で起こったことが後押ししたこともあり、その反転現象として、LED照明が普及の追い風となった経緯があります。昨今の環境保全(エコ)意識の高まりで、「環境保全といえばLED照明の買い替え」という、低知能者でもわかる「見かけ上のわかりやすさ」も普及に大きく関係していると分析します。また、「手軽に環境都市の実現を」との思惑がある行政レベルでの普及後押しも、環境関連イベントで、「最も手軽にできる省エネ家電買い替えの花形」として全力で推奨するという、異例な展開を見せるほどになっています。たしかに、室内の照明は連続使用する関係もあり、すべての照明を白熱電球や蛍光灯からLED照明に変えるだけでも、目に見えるほどの節電効果があります。このことは、FMGの事務局でも認知していますし、LED照明代替による節電効果に限っていうなら、大きな前進であると評価できるでしょう。

しかし待ってください。この、一見して華々しいように見えるLED照明のブームの一方で、これまでは考えられなかったような消費者トラブルも頻発しており、全国の消費生活センターや国民生活センター、消費者庁も黙ってはいられない状況になっているのです。一見していいことづくめのように思えるLED照明の一体何が問題になっているのか、消費生活センターの相談などでは聞くことのないような、理系の記者だからこそできる、納得の技術的解説をしていきます。この記事を読むことで、今現在の照明選びで、各々にとって本当に納得のいく結論に到達することになれば幸いです。

そもそもつかない!使いものにならない!

従来の蛍光灯器具にそのまま交換できる手軽さを謳ったLED照明、とくに、円形(サークル型)のLED照明は、照明器具との組み合わせによっては、メーカーの説明どおりに使用しても、点灯しないことが、予想以上に多くあります。白熱電球代替のLED電球の場合、このようなトラブルはほぼ皆無に近いだけに、戸惑いやショックは大きいものがあります。なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。その最大の原因は、接続する蛍光灯器具と円形LED照明のどちらも、電子回路が「ブラックボックス化」されていることにあります。蛍光灯器具も、一時的に電圧を200V前後まで昇圧させ、その勢いで点灯させる、古典的なグロー球とトランスを併用するタイプもあれば、新型のインバータ制御型のタイプもあります。とくに厄介なのが、後者との組み合わせです。後者は回路が複雑なうえ、メーカーや機種によっても、動作機構がまちまちであるため、不具合が起こりがちとされます。例えば、蛍光管であっても、1本では点灯せず、2本同時に接続した場合のみ点灯するという特殊な動作機構の蛍光灯器具もあり、そのような器具の場合、円形LED照明を1本だけ、説明書通りに交換しても点灯しない場合があることを、FMGでは確認しています。今日では、LED照明はかなり値下がりしてきたとはいっても、従来の蛍光管と比べれば、4〜5倍程度の初期投資となり、購入を躊躇しがちです。長い目でみて節電になるうえ、長寿命になるという賢い選択で思い切る善意の購入が裏目に出ることになり、また、夜は数日間は暗い生活を強いられることにもなり、そのストレスは想像以上に大きいものです。とくに、急いで交換しなければならないときは、現在使用中のものと同機種のLED照明で、動作に納得しているような場合を除き、とりあえずは、確実に点灯する従来型の蛍光管に交換しておくのが無難です。動作機構に不明要素が多い他の機種のLED照明(円形管)を購入するのは、リスクの高い買い物であると認識しましょう。以後、どうしてもLED照明に替えたいのであれば、交換した蛍光管が寿命を迎えるまでの間に、家電店などで本当に納得のいくLED照明の品定めを、時間に余裕をもって行っておきましょう。とくに、住宅設備の一部ともいえるような、据え付け型の器具の場合、動作にどうしても納得がいかず、返品交換を余儀なくされるようなことになると非常に厄介ですので、技術的知識の豊富なスタッフに相談できる家電店で慎重に品定めをするようにしましょう。

最悪のケース、発煙・発火!

4つ口の蛍光灯ソケット、どのような場合でも、常にAC100Vが出力されているとは限らないことをご存知でしょうか。とくに、グロー球とトランスを使用して点灯する機構の場合、一瞬の間だけではありますが、200V前後、とくに高い電圧を出力する機種の場合は300V近い電圧が出力されることもあります。このような場合、例えば、常夜灯ソケットアダプターを介して接続する、常にAC100Vを入力することを前提にしたLED照明を接続したりすると、突然発煙したり、発火に至り、その後、電子回路の焼損により故障して使用不能になることもあります。このような故障の場合は、ユーザー側の誤った使用方法に起因するとみなされますので、製品の保証対象外になったり、返品交換も当然断られるのが通例で、一方的に損をすることになりますので、十分に注意する必要があります。

いつものFMラジオが使えない!スイッチングノイズによる電波障害

電波障害の問題は、総務省が啓発をしている割には、意外と身近なところで頻発しており、家電業界とは温度差がある問題となっています。AC100Vで使用するLED照明は、電波障害の問題が最も深刻な家電製品のひとつです。

AC100Vで使用するLED照明は、白熱電球のフィラメントのように、LED素子に直接AC100Vを印加しているわけではありません。必ず、LEDの点灯に適した電圧に調整する降圧回路が仕組まれており、さらに、ちらつきのない安定感のある点灯状態とするために、直流に変換していると考えられます。このような、交流電圧を降下させてから直流に変換する電源回路としては、トランスとダイオード、コンデンサーを使用するトランス型の降圧・整流回路がありますが、回路が必然的に大きくなるため、容積が非常に限られるうえ、軽量が求められるLED照明に内蔵することは現実的ではありません。そこで採用されているのが、スイッチング回路です。スイッチング回路とは、ごく小さい回路で、任意の電圧の直流を任意の電圧の直流に変換することを実現する回路であり、近年の半導体技術の進展とともに、近年、急速に利用が増えた電源技術です。AC100Vを電源とする場合は、一旦整流して、DC141Vに変換し、この電圧を、コイル(インダクタ)とコンデンサー、半導体素子のMOSFET(電界効果トランジスタ)を含むスイッチング回路で高速スイッチングを行うことで、直接LED素子を発光させるのに適した目的の直流電圧を得ていると考えられます。電源容量は、AC100V側で数十VA(数百mA)程度で済み、スイッチング回路は非常に小さくできるため、電球や円形管に内蔵することが実現できているわけです。一見して便利でいいことづくめのようにも思えるスイッチング電源ですが、その宿命ともいえる欠点もあります。それは、高速スイッチングの際に発生するスイッチングノイズです。ラジオの前で、大きなコイルに直流電流を急激に流したり切ったりを繰り返すと、バリバリという雑音が入ることがありますが、これが、スイッチングノイズの正体になります。この、電流を流したり切ったりする動作の頻度のことを、スイッチング周波数といい、数kHzくらいから、高い場合は、数十MHzくらいの場合もあります。一般に、スイッチング回路の性能としては、スイッチング周波数が高いほど高性能といわれることがあり、裏を返せば、それは、FMラジオの受信障害の原因になることもあるのです。LED照明によっては、80MHz前後とされるスイッチングノイズを発生する機種もあり、そのような機種では、80MHz前後を周波数とするFMラジオが全く聴取できないほどの受信障害を起こすこともあります。(一方で、同じ条件で、90MHzに近い周波数のFMラジオ局の受信を試みた場合、受信障害の影響は比較的軽微でした。このことから考えると、80MHz近傍に、スイッチングノイズの電磁波の極大点があると類推されます。)これは、日頃、聴き慣れたFM局がある方にとっては切実な問題といえます。また、電磁波そのものが健康に与える影響も無視できません。一時的に使用する機器ならまだしも、常時居住するスペースの照明機器の場合は、それから発せられる電磁波に長時間にわたり晒されることになり、その影響は無視できません。

商用電源に頼らない省エネと電磁波対策とを両立させるためには、DC12VまたはDC24Vを電源とする、スイッチングフリーのDCライティングシステムを検討することも視野に入れましょう。ソーラーパネルと蓄電池とを接続した、オフグリッド直流電源に、スイッチング回路を含まない直流電源(12V・24V)対応のLED照明を直接接続するものです。チャージコントローラを含むオフグリッド直流電源の場合、チャージコントローラにスイッチング回路が含まれることがありますが、電源を負荷機器から隔離することで、ラジオ受信機の受信障害や電磁波による健康問題対策を行いやすくすることができます。照明そのものはスイッチングフリーで、純粋な直流で動作するため、電磁波の影響を最大限に排除することが可能になるわけです。

環境意識もバランスが大切!

前にも述べたように、地方自治体などは、環境啓発の取り組みがしやすいとして、エネルギー(節電)・省資源・ごみ減量(3R)といったテーマに偏重しがちという問題があり、FMGの報道局がある大阪府豊中市もその例外ではありません。豊中市の場合、他の地域から見れば、環境先進都市のように映るそうですが、豊中市に拠点を置くFMGは、そのように言われても回答に困るというのが実情です。ほんとうの環境(エコ)の取り組みとは、そのほかにも、化学物質管理やリスク・コミュニケーション、生物多様性の保全、産業構造の均衡化(とくに農地・森林利用の最適化)、食環境、生命倫理(動物愛護)、そして、環境保全の担い手となる人の教育(ESD)など、幅広い取り組みをバランスよく、同時進行で進めていくことをいいます。また、人間の暮らしの中でやる以上、取り組みをしたことでストレスを抱え、QOLを下げるようなことになったのでは持続可能ではなく、本末転倒です。「環境といえば省エネさえできればOK」というような偏った見方ではなく、あらゆる環境活動要素に関して網羅的に関心を持ち、持続可能性の意味を噛み締めながら、むらのないように取り組むバランス感覚が重要になるということを肝に銘じていただきたいものです。

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