なぜマグちゃんシリーズが問題であるといえるのか、なぜ消費者庁に通報すべきだったのか、それには、マグちゃんがウソだと断言できる決定的な化学的矛盾があるのです。そこで、マグちゃん問題の要点といえる2大矛盾について説明することにします。
- マグちゃん程度のアルカリ性ではけん化反応は起き得ない
けん化反応には比較的強い条件が必要です。石けん製造に求められるような完全けん化を実現するには、50%の水酸化ナトリウム水溶液の、水酸化ナトリウムとして1.1当量以上となる量を油脂に加え、そのうえで煮沸するといった条件が必要となります。表面に付着した油脂(トリグリセライド)によって構成される汚れを、アルカリの作用だけで落とすには、最低でも部分けん化が起こり始めるpH11以上は必要であると考えられています。しかし、マグちゃんの「マグネシウムが汚れを落とすしくみ」の説明では、pH9.5程度とあったのです。この程度のpHでは、けん化反応を起こすには不十分です。 - マグネシウム石けんは水に不溶で界面活性作用を示さない
マグちゃんの「マグネシウムが汚れを落とすしくみ」では、「弱アルカリイオン水(水素水)が油脂を分解することで、水石鹸を生成し、その界面活性作用で汚れを落とす」というようなニュアンスの説明がなされていますが、それは、化学的に誤っています。なぜなら、マグネシウム石けんは水に不溶性の粉末で、水中で界面活性作用を示さないからです。例えば、マグネシウム石けんのひとつ、ステアリン酸マグネシウムは、医薬品の錠剤の滑沢剤や顆粒剤の固化防止剤、化粧品のケーキング(固化・ベタつき)防止剤のような、その水不溶性を活かした用途に用いられているほどです。
洗濯用洗剤として洗浄力の劣る合成洗剤との洗浄力比較は恣意的
とくに油脂からなる汚れに対しては、現在使用されている洗濯用合成洗剤は、洗濯用石けんと比べると、比較にならないほど洗浄力が劣るものが多いものです。一方で、マグちゃんの弱アルカリイオン水は、そのものに水中での油脂分の乳化分散に必要な界面活性作用はないため、油脂からなる汚れに対する洗浄力は、水洗いと比べても優位な差が認められないほど、ないに等しいくらいに低いものです。どちらも低レベルでの比較ですから、合成洗剤とあまり変わらないということは、目をつぶってもらえるかもしれません。
しかし、ここからが問題です。石けんとの洗浄力比較に関しては、何ら言及されていないガン無視状態なのです。とくに断りがないかぎり、論理上は、洗濯用洗剤には、石けんも含まれますが、洗浄力がきわめて優秀な石けんのことをあえて言及していないのです。なぜなら、洗浄力が高い洗濯用石けんと比較してしまうと、「洗剤と同程度の洗浄力」とはいえないことは明らかになってしまい、(洗浄力が水洗いと遜色ないくらいに低い)合成洗剤との比較のようなごまかしが効かないからです。言いかえれば、洗濯用石けんとの洗浄力比較では、「洗剤と洗浄力がほぼ同じ」ということがウソだとすぐにバレてしまうからです。石けんは論外といわんばかりに、あえて言及しないという傲慢な姿勢には、石けん普及運動家などに対する恨みや侮辱といった、宮本製作所の悪意すら感じます。
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