スーパー大手のイオンやイトーヨーカドーが精肉コーナーでミンチタイプの大豆肉の販売を開始するなど、いよいよ日本にも代替肉ブームが到来しつつある。各社は、代替肉の販売開始の目的として、「温室効果ガス発生量の低減」を挙げているが、実はなかなか言い出しにくい本音があるようだ。
たしかに、畜産由来の温室効果ガス発生は無視できないものがあり、畜産物の消費抑制の地球温暖化防止効果は大きいとみられ、動物愛護団体や環境保全団体が訴えてきてきたことである。しかし、スーパー大手などが、そのようなことを本気で考えているかというと、疑問が残る。どうやら、これは、無難な建前のようである。では、本音は何であろうか。
これまでにも、当メディアは、鳥インフルエンザ禍などが関連した、畜産のあまりにも不都合な真実についてクローズアップしてきた。サステナビリティ意識の高い市民にとって、畜産物の第一印象は「残酷(cluelty)」である。しかし、業界側としては、「残酷をなくしていきたい」と腹の底では思っていても、言い出しにくい事情があるのだ。畜産業界の反発が怖いのだ。畜産業界の蔭のまた蔭には、反社会的勢力も潜んでいるともいわれている。このような畜産業界を徒に刺激せず、一方で、業界の持続可能性戦略の手柄を無難に強調したいという思惑がそこにあるのだ。
では、欧米ではどうだろうか。欧米の社会は本音と建前というような二面性はなく、本音で真っ向からぶつかっていく社会である。だから、激しいデモもよく起こるし、アメリカでは小さな事案であっても訴訟が頻繁に起こる。本音の社会だから、市民にハッタリは通用しない。だから、スーパーの本音も表向きの宣言も一致し、また、市民の想いとも一致するのだ。このような社会だからこそ、畜産に関しても、世界で最も早く「残酷をなくしていく」改善の動きが起こっている。
畜産の問題に限ったことではないが、日本人には、ありもしないものを恐れる悪い癖がある。これが、何かにつけて否定的になる言い訳になり、市民運動文化が発展しづらい原因になっているのだ。代替肉の普及の動きは、当然のこととはいえども、腰が重い日本の持続可能性の動きに一石を投じるという意味で、一定の評価はできよう。しかし、このような悪い癖を正さないかぎり、いつものように一過性のブームに終わってしまわないか心配であり、ひとえには喜べない。PDCAが途絶えることのないよう、今後の動きに注視していきたい。
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