こどもの娯楽と戦闘欲望

昨今の過激なまでの鬼滅の刃ブームや商業ゲームブームには、多くのことを考えさせられる。思えば、執筆者の私は幼少の頃から、サッカーやドッヂボールが嫌いなほど争いごとが嫌いだった。もちろん、球技や武道といったスポーツそのものは、公正公平の精神を育む、教育上健全なものと判断されるのが通念ではあるが、それさえも、平和主義に照らせば、ボールを故意に人にぶつけるといったところから、人を故意に傷つける戦闘に通じるとされ、敬遠する向きもある。私は、幼少時代からその平和主義的な感受性が鋭敏で、そのことが、傷害の苦しみから他者を救う市民運動に駆り立てたのかもしれない。今でもそのようなこどもは少なからずいると信じており、そのため、銀鮒の里学校では、競技性のあるスポーツは必修にする予定はなく、その代わりに、トレッキングや農業実習、水泳、昔あそびなどで身体を動かす楽しみを伝えたいと考えている。

戦闘欲望に関しては、性差がとくに大きく現れ、動物学的にもオスのほうが強いということがわかっている。タイ原産の淡水魚ベタがオス同士になると、一方が死ぬまで死闘を行ったり、鹿やカブトムシがメスの獲得戦のために立派な角を持っているのもその現れである。人間の世界でも同じことがいえる。長きにわたり、格闘技やサッカーなどの競技性のある球技の多くは、男性が行うものと考えられてきたが、動物行動学的には当然のことではある。しかし、そこは理性のある人間であって、そのような考え方はジェンダー偏見の問題があるという考え方が一般的になった今はなくなってきつつある。戦闘シーンがある商業ゲームや勧善懲悪の商業アニメの多くは、今でも男子の方が好む傾向がより強い。

一方、対極的な関心事に、動物権利保護(アニマルライツ)や完全菜食(ヴィーガン)の関心を持つ人は、女子が多い。これは、生あるものに優しく接したいと願う母性本能に起因すると考えられている。食生活も密接に関係しており、動物性食に偏る人は気性が荒くなる傾向があり、ベジタリアンやヴィーガンの人は、争いを嫌う優しい人が多い。これは、私自身がベジタリアンやヴィーガンを実践しているときにも変化を感じていることである。争いごとをするのが「かったるい」と感じ、優しく接したいと願う気持ちが強くなるのである。やはり、その傾向は、肉食動物で気性が荒く、草食動物で温和であるというように、動物行動学的にもよくあてはまる傾向である。何らかの生化学的な因果関係が複合的に現れた結果なのだろう。

ここで、こどものあそびの問題について考えることにしたい。都会の現代っ子のあそびや課外の過ごし方は、どのようになっているだろうか。「片手にはゲームのコントローラー、もう片手にはマクドナルドのセットのハンバーガーかコーラを手にして、殺傷シーンを繰り返す商業ゲームにのめり込む」といったようなあそび方や過ごし方が多いのではないかと思われる。実は、このようなことが、近年、小学生の間で急増する暴力問題行動を急増させている大きな原因ではないかと考えている。もちろん、そのように考えるに至るには、科学的な理由がある。まず、ハンバーガーはリンを多く含む肉と、同じくリン酸として多量のリンを含むコーラは、摂取によりリン酸過剰状態となり、過剰のリン酸が、精神の安定と密接な関係があるとされるカルシウムイオンの体外排出を促す。その結果、カルシウム欠乏状態となり、生化学的にキレやすい状態をもたらす。さらに、目には、ゲームの画面から一方的に送られる暴力シーンや殺傷シーンのような過激な描写を含む情報が入力され、それが頭脳に伝わって交感神経を刺激し、ゲームをプレイしている間ずっとアドレナリンが出続ける状態となる。のめり込んだ状態からゲームをやめると、急にアドレナリンの分泌が止まり、ハイな状態を保ちたいという禁断症状が現れる。その禁断症状が、ゲームのシーンによくあるような暴力であったりする。その傾向が病的なまでに顕著になると、ゲームの仮想世界と現実世界との区別がつかなくなり、憂さ晴らしに実際に暴力行為で他人を傷つけたり、植栽や動物を傷つけたり、公共物を破壊したり汚損したりと、学校生活や社会生活に明らかに悪影響が及ぶようになる。これがゲーム障害である。このように考えると、暴力シーンや殺傷シーンのある商業ゲームや商業アニメ、マクドナルドなどの高リンジャンクフードは、こどものいじめや暴力行為に密接に関わっていると断言してもよいだろう。

追って詳しく述べる予定であるが、優しいこどもであることを願うのであれば、まず必ず、こどもにゲームやスマホは絶対に与えないということを実践してほしい。そして、マクドナルドやファミレスのような肉食過多の食事ではなく、風味の濃い有機農法もしくは自然農法の在来種野菜の味の多様性に、できるだけ幼い頃から親しませてあげてほしい。私も経験していることであるが、ゲームや食の問題に無頓着な家庭が親子揃って否定の言い訳ばかり探すのに対して、そのような実践をしている家庭は、親子揃って積極的でいきいきしている。その積極志向は、食物繊維を多く摂取する健全な食生活が腸が清浄にして、カルシウムイオン濃度を常に安定に保ち続け、現実世界の良質な刺激を受け続けていることによってもたらされるのだと考える。

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