世界保健機関(WHO)の一機関、国際がん研究機関(IARC)は6月29日、合成甘味料として多くの国で使用されているアスパルテーム(L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル)の発がん性分類が確定し、その結果を7月14日に発表すると、IARCのウェブサイトに掲載しました。
●アスパルテームの発がん性分類確定を伝えるIARCのウェブページ
https://monographs.iarc.who.int/iarc-monographs-volume-134/
アスパルテームの発がん性分類作業はすでに完了しているとみられ、14日の発表までの間は、非公開の機密情報扱いとするとしています。今日において、アスパルテームは、低カロリーコーラのようなジャンクフードをはじめとして、日常生活の非常に身近なところにも普及していることから、市民の関心が非常に高く、拙速な発表による社会の混乱を防止するために、時間差で発表するとみられます。
これに伴い、食品添加物に関するFAO/WHO合同専門家委員会(JECFA)は、アスパルテームの一日許容摂取量(ADI)や食事曝露評価を含むアスパルテームのリスク評価行動指針を更新するとしています。
FMGでは、これまでの他の化学物質などの発がん性分類の事例と比較して、アスパルテームは、グループ2B(人に対して発がん性の可能性がある)に分類されるのではないかと予測しています。
アスパルテームの発がん性に関わる化学的要素、ふなあんインテリエゾン解析
アスパルテームは、明確な発がん性があるとはいい難いものの、条件さえ合えば、発がんに関与しても疑いはないとみられます。アスパルテームの分子構造上、アスパルテームは、分子内求核反応に伴うメチルエステルの分解が起こりやすいとされています。加熱等の刺激を与えると、L-アスパラギン酸側のアミノ基が、L-フェニルアラニン側のメチルエステルのカルボニル基に求核的に働きかけ、その結果、対応するジケトピペラジン(DKP)とメタノールを生成するというわけです。この反応は、アスパルテームを加熱すると甘みが減弱し、その分だけ苦味が生じる現象の化学的本質として、すでによく知られています。この反応は、条件次第では、室温条件でもある程度は起こりうると考えられます。アスパルテームのメチルエステルの分解の結果生成したメタノールは、直ちに体内のアルコール脱水素酵素の作用によって、ホルムアルデヒドに酸化されます。このホルムアルデヒドは、単一物質としては、IARCの発がん性分類1(人に対する発がん性がある(ことが明らかな物質等))に分類されています。
【IARC発がん性分類を取り扱う際の注意事項】
IARC発がん性分類は、あくまでも、それぞれの物質などの発がん性の定性的尺度を与えるものにすぎないのであって、実際の曝露による発がん性リスクをあらわすものではありません。実際の発がん性リスクを評価する場合は、曝露状態(経口(食事・飲用)、皮膚接触、吸入など)や曝露する主体の状況(妊娠中・非妊娠、年齢等)、曝露量といった定量的重み付けをし、それらも含めて総合的(加算・乗算的)に考慮したうえで行われるべきです。例えば、IARC発がん性分類1の化学物質がごく微量、食物への残留付着のようなかたちで体内に単発的に取り込まれたとしても、そのことだけが原因でがんが発生する可能性が高いと判断することはできないということです。また、アルコール飲料の飲用もIARC発がん分類1の生活習慣として分類されていますが、実際にアルコール飲料の飲用が直接的原因となって発がんリスクを高める条件としては、単一物質としてのエタノールを、常識的な想定を超えた、極端に多くの量を摂取し続け、アルコール依存症を発症するような条件になるか、もしくは、赤身肉や食品添加物を多く含む加工肉に偏った食事、不規則な生活の原因となる夜間シフト勤務などの複数要因の各リスクシェアとあわせた結果、発がんに足る条件が成立するような場合となり、アルコール飲料を飲んだからといって、それだけによって発がんに直結するというわけではないことには、注意が必要です。(時々、嗜む程度ですが、記者も(食品としての)アルコール飲料は摂取していますので、ご安心ください。)
日本では「学童に推奨」の実態も
日本の学校ではどこ吹く風…世界から取り残された日本の実態が浮き彫りになっています。
小学校から高等学校までの学校保健の支援を建前とした、公益財団法人日本学校保健会(東京都港区;以下、日学保)は、現時点において、アスパルテームをはじめとする合成甘味料を使用した食品を、「学校健康支援特別食品(等)」として推奨している実態があることを、FMGの調べで確認しました。FMGは日学保に対して、問題点の指摘を含む厳重抗議と指導を行いました。WHOはすでに、アスパルテームを含む非栄養性(非糖)甘味料を、減量目的で摂取したり、こどもに与えるべきではないとの勧告を出していますが、日学保はFMGの質問に対して、「(WHOが当該の勧告を行っていたことは、つい最近のことなので)知らなかった」と答えていました。WHOが勧告を出す以前から、合成甘味料が腸内細菌叢や代謝系に悪影響の懸念があることは、多くの指摘があります。このことから日学保は、WHOの勧告の有無にかかわらず、推薦を解除するべきです。以前から日学保の利権団体の実態は問題視されていましたが、今回の取材でより鮮明になったかたちです。(※日学保の利権団体問題については、後に配信予定の別記事で詳しく解説する予定です。)
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