ぜひ、お子様と一緒に、音声を聞きながらお読みください。
何でも誰かがやってくれる、一見して便利にみえる都会的な日々の暮らし、そのような環境で、人は成長できるでしょうか。
人というのは、ほんとうに無力な生きものです。自然の恩恵なくしては、人は生きていけないのです。
異常気象、自然災害、感染症、人の英知では予測できない数々の災難…ひとたび自然が人間社会に牙をむければ、まったく歯が立たないことも少なくありません。大きくも小さくも、誰しも思い知っているはずです。
それでもなお、現実から目を反らし、知らんぷりをする人の、なんと多いことか。
決して大げさなことではありません。現実逃避、それは、人類滅亡への第一歩です。
例えば、鶏卵。卵といえば、生命のはじまりと思うかもしれません。それが空虚な理想論だとは知らずに。
わが国のお店で大量に売られている「物価の優等生」としての鶏卵、実は多くの生命の犠牲や、熾烈なる搾取の連続で成り立っていることを、あなたはご存知でしょうか。
ご存知であれば、あなたは、どのように行動に反映しているでしょうか。
生まれる時点で、その半分程度が殺されるという現実。
オスとわかった時点で、ほぼすべてが殺されるという現実。
生き残ったメスは、何の罪もないのに、囚人よりも劣悪な狭い檻に拘束されるという現実。
成長したメスは、卵を搾取され続け、産まなくなれば断食させられ、無理矢理産まされ、若くして力尽きて死んでしまう鶏も多いという現実。
鳥インフルエンザが発生すれば、人間が自然の摂理に問わずにでっち上げた法※1のもとで強制虐殺されるという現実。
生き延びても1年半※2、その後は檻から強制的に引き抜かれ、殺されてドロドロに溶かされるか、砕かれるか、焼かれるか…という現実。
知ってか知らずか、何も考えずに、安い鶏卵を買うという、なんて愚かなことか。
トレーディングカードだとか、商業ゲームだとか、マクドナルドだとか、拝金主義の数々、こうして失う、人生の教訓を含む伝統的なあそびや暮らしもまた然り。
人間は、いつから愚かな生きものに成り下がったのでしょうか。
農とは、自然の力を活かし、自然から許された人の英知を結集して、生産する営みの概念です。
しかし、私たちがいま、口にしている食べ物は、ほんとうにそのような由緒正しき農の産物でしょうか。
私たちは、このことをいつも自問自答しながら、自然に答えを求めていきながら、農を営んでいます。
いま、あなたにできること、それは、そのような由緒正しき農を理解し、日々の暮らしに取り入れ、生き方を振り返ることではないでしょうか。
このようなことは、いえるようで、なかなかいえません。
実際に大地と真摯に向き合い、真実の追求を繰り返すことを地道に繰り返しているからこそ、いえることなのです。
あなたも、そのような大地に向き合えば、あなたなりに、その真意を会得できるはずです。
今、何かがおかしい、と思ったなら、農とは何かをじっくりと考えてください。
そのためには、大地としっかり向き合って、動きながら考え続けること。そのことを実行してください。
※1 家畜伝染病予防法のこと。
※2 鶏の本来の寿命は約10年。
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