テイスティングノート:アラン クウォーターカスク カスクストレングス

クリアなニュアンスのアイランズシングルモルト

アランは、スコットランド・アラン島にあるアラン蒸溜所のアイランズ・モルトです。最も特徴的なのは、ピート感が全く感じられないこと。スコッチウイスキーでは、僅かであってもピートの香りは感じられる銘柄が多いですが、このアランは、ピートの香りが全くといってよいほど感じ取れません。それゆえに、非常に透明感があり、雑味が全くといってよいほど感じられない、クリアな味わいになっています。ピート感の強い銘柄が好きな方でも、これはこれでありだと思える味と香りで、ウイスキーの世界観を拡げる銘柄の一つともいえます。それくらいにクリアな味わいですから、ピート特有の香気が苦手で、華やかな味わいの銘柄がお好きな方であれば、気にいるのではないかと思います。

甘いバニラ様香と鮮烈なオーク香が特徴のバーボンウイスキーの熟成で用いた経歴があるバーボン樽で7年間熟成の後、容量が4分の1(約125L)のクウォーターカスクに詰め替えてさらに2年間、追加熟成を施し、未加水のカスクストレングスでボトリングされています。

ファースト・インプレッションは、バーボン樽由来と思われるバニラと、クウォーターカスクでの追加熟成でさらに強調されたオークのニュアンス、バックグラウンドには、甘酸っぱい果実を想起させるかすかな酸味が徐々に開いていきます。(ここでいう酸味とは、柑橘果汁のように、直接的に否が応でも感じるような酸味ではなく、よく感じ取ってみると、隠し味的ニュアンスとして捉えられる、酸味といえるかどうかわからないほどの、非常に繊細なものです。)香り立ちは複雑ではありませんが、整然とよくマッチした印象を受けるすばらしい銘酒といえます。この銘柄はカスクストレングスで、アルコール度数は56.2度もあります。そのため、含水率は容量比で半分以下で、50容量パーセントを超えるエタノールで、ウイスキー全体の極性が極小に抑えられています。まず、スニッフィングで嗅覚的情報を最大限に感じ取った後、ごく少量を口に含み、拡げていくことで、口の中の水分で極性が高まっていき、溶媒和状態に変化が生じ、スニッフィングやファースト・インプレッションでは感じ取れなかった香りが徐々に現れてきます。その回数を増やすにつれて、より繊細な味わいをより高感度で感じ取ることができますが、とくに極性が低く、開きしろが大きく、その傾向がより強いのが、カスクストレングスの化学ガストロノミー上の魅力といえます。

ペアリングの考察

ストレートでは、繊細でクリアながらも、カスクストレングス特有の非常に力強い味わいのため、食後酒として最適といえるでしょう。この銘柄は、辛口の白ワイン代替となるような味わいですので、風味がしっかりとした野菜料理の締めには絶妙の相性かもしれません。

食中酒であれば、水割りやハイボールになるでしょう。ストレートでは、含む量によっては、舌を灼くような感覚もあるので、適宜割るのがよいでしょう。繊細ながらもしっかりとしたイタリア野菜などの料理の味わいと互いによく調和して、最高のガストロノミー体験ができることと思います。

イタリアでは、グレングラントというスペイサイドの銘柄が最もよく売れている銘柄なのだそうです。これも、クリアで華やかな味わいが特徴といわれ、そのような味わいを好む方にとても受けがよいようです。今回紹介したアランも、それに近い系統の味わいと考えられますので、ファーマーズ・レシピのイタリア野菜料理に合わせる銘柄の候補としていかがでしょうか。

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