NHKトリセツショーまたも物議「食品衛生関係者の努力を踏みにじる内容」

食中毒の危険も!肉の低温調理を推奨か

日本放送協会(NHK、以下、NHK)が15日に放送した「あしたが変わるトリセツショー」の内容がまたも物議を醸しています。問題の内容は、「肉は50〜60℃(の低温調理)で、肉汁とは別物の『ゴールデンジュース』が溢れ出てジューシーになる(ので、おすすめします)。」というもので、実質的に低温調理を推奨する内容となっていました。低温調理をめぐっては、調理温度がタンパク変性が起きるか起きないかの境界域となる温度帯のため、とくに素人の勘に頼る調理条件では、重篤な食中毒の原因になるおそれがあるとして、保健衛生当局が(実質的には禁止勧告に近い)注意を喚起しています。

低温調理は、低温殺菌牛乳の殺菌に用いられている条件と同等以上の条件が実現可能な場合には、安全であるとの科学的解釈もありますが、NHKのトリセツショーでは、そのような、プロが実践するような厳密な温度管理条件の技術的解説は一切なく、あくまでも素人受けを狙ったような、技術的解釈を割愛した骨抜きの内容となっていました。一方で、厚生労働省は、13年前に発表されたHACCP(危害防止重要管理点)大量調理マニュアルにおいて、食肉などの加熱不十分に起因する食中毒を確実に防止するためには、食材の中心部において75℃1分を保持、または、これと同等以上の条件を保持すること、さらに、二枚貝などノロウイルス汚染のおそれがある食品においては、85℃で1分以上、または、これと同等以上の条件を保持すること、としています。各地域の保健所など保健当局衛生当局も、このガイドラインに準拠した食中毒予防啓発に神経を尖らせています。当然のことながら、学校給食などのばらつきの影響が許されないような厳密な食品衛生管理が求められる現場では、このようなHACCPの考え方に基づく食品衛生管理が当たり前のこととして実践されています。これに反してNHKは、トリセツショーの放送のなかで、「この温度条件では肉がパサつく(のでおすすめしません)」という旨の、否定的な説明をしていたのでした。このことからすると、15日放送分のNHKのトリセツショーの内容は、HACCP実践の現場の努力を踏みにじるような内容になっているといえるわけです。

このような、厚生労働省の勧告を無視するともとられかねないような、誤解を誘発するような内容を安易に放送することは、国民(視聴者)の健康と安全の保護を最優先にすべきであるという、公共放送が果たすべき責任に著しく反する重大な問題があるとして、FMGは、NHKに対して、15日放送分の「あしたが変わるトリセツショー」の訂正放送を行うことを強く要請しました。

梅雨にあたるこの時期は、高温多湿で、食材の取り扱いにはとくに厳重な注意が求められる時期です。根拠のない素人の勘に頼るのはきわめて危険です。食中毒の原因(細菌、かび、ウイルス、毒素等)の特性を常に科学的に考えた、慎重に慎重を重ねた対応を行うようにしてください。

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