能勢・ぎんぶなのうえんだより(2023年2月17日)

新しい園芸文化開拓にかける40年の本気:持続可能な園芸を多くの人に

厳しい環境でも育てがいを実感できるオープンソース品種(原種・選抜固定種)を一人でも多くの人に届け、持続可能性上の価値がある本物の園芸に関わる人を、日本でも増やしたい。そんな思いで、能勢・ぎんぶなのうえんでは、まだあまり栽培事例がない花卉品種の選抜作業を進めています。

能勢・ぎんぶなのうえんの栽培管理責任者(プロフェッショナル・アカデミック・ガーデナー)、オカヤマンヘンな鮒は、小学校3年のとき、植物図鑑に出ていたラナンキュラスの球根を植えてみたことから園芸を始め、今年で40年になります。今となっては、どこででも手に入るラナンキュラスですが、あのカラッカラの乾燥球根から発芽し、春に黄色い花が咲いたときには、感動したものでした。今のこどもたちには、私が小学生の時に体験したわくわくをはるかに超えるわくわくを、まだあまり栽培事例がない植物の栽培を通じて実現させてあげたい。そんな思いで、園芸的価値(horticultural value)の高い品種の選抜作業を進めています。

SDGs時代に求められる園芸的価値を決定づける要素として、能勢・ぎんぶなのうえんでは、主に以下のことがあると考えています。

  • 花姿や草姿が調和がとれ、ナチュラルガーデンやポタジェガーデンなどの素材として映える品種の可能性が高いかどうか(造形的美)
  • 耐暑性や耐寒性が強く、また、馴化などに関してクセが少なく、現実的に利用しやすい品種であるかどうか(環境適応性)
  • 繁殖力が強すぎず、その一方で、園芸者の望むように繁殖させやすい品種かどうか(難雑草化性)
  • 栽培難易度が容易ないしは中程度で、育てがいを実感できる品種かどうか(園芸適合性)
  • 栽培難易度が高めでも、農芸化学や品種特性などの技術的ポイントをしっかり押さえさえすれば継続的に栽培可能であり、栽培技術の向上が実感できる品種かどうか(上級者向け園芸適合性)
  • これらの要素を満たしつつ、日本国内の市場にはほとんど出回らない希少性があるかどうか(市場希少性)

例えば、栽培事例の多いコレオプシス属(キンケイギク類)は、放任していても雑草化するくらいに繁殖力が強すぎることが問題視され、品種によっては、特定外来種として、栽培や譲渡が禁止された種もあるほどです。このような特性を持つとされる種属は、禁止対象外の品種であっても、おすすめしていません。一方で、ぎんぶなのうえんが推す属の一つであるストケシア属は、生育旺盛で繁殖容易ですが、雑草化することはなく、耐暑性も耐寒性も非常に強い特性があり、優しいタッチの葉と花がよく調和しています。このような植物種ですと、初心者から上級者まで、各人のレベルに合った楽しみ方ができ、園芸の醍醐味を得ることができます。

もちろん、栽培実績がほとんどないような植物の場合、園芸歴40年でもってしても、栽培法の確立は手探りであり、試験栽培の際には、何度も失敗があるのです。できるだけ多くの品種の試験栽培を経験し、その中から選ばれる普及候補品種はかなり絞り込まれます。いいかえれば、新しい園芸を追求するために、能勢・ぎんぶなのうえんを訪ねる園芸家の方は、そこで、成功よりも数多くの失敗を繰り返してきてできた、40年の経験を凝縮した珠玉のエッセンスが得られるというわけです。

例えば、今春に試験栽培での導入を予定している、園芸での栽培事例が少ない品種には、次のようなものがありますが、これは、ほんの一例です。

  • スイカズラ科のスカビオス(Scabiosa属、Succisa属、Knautia属、Cephalaria属など)(※庭園で映える調和的造形美)
  • スイカズラ科Valeriana属(※美麗な花と草姿、花に香りあり、コンパニオンプランツとしての価値も期待)
  • キョウチクトウ科(旧ガガイモ科)Vincetoxicum属(※星型の花がおもしろい国産種、新しい知見が得られる潜在的価値あり)
  • キク科Anthemis属のうち、国内ではほとんど知られていない希少品種(原種)

他にもまだまだ多数あります。ぜひ、ウェブ検索して、わくわくしてみてください。キク科Anthemis属については、昨年のローマンカモミール(Anthemis nobilis)実生栽培試験で、想定を超える好成績が得られたことに加えて、近年(春季)の園芸市場において、「新世代のマーガレット」ともいわれるローダンセマムにブームの兆しが現れていることに対して、あえて別の種を栽培することで、ご来園客さまに多様な選択肢を用意し、園芸の楽しみに膨らみをもたせるねらいがあります。(品種は現時点では企業秘密ということで、乞うご期待、ということにしておきます。)これらについては、開花時などに、その魅力について、追ってお知らせできるかと思います。40年の経験を活かし、できるだけ成功率が高いと見込まれるものを選りすぐっていますが、栽培事例そのものが少ない、今のところはかなりマニアックな品種もあるため、もしかすると、失敗してしまうかもしれません。それでも、諦めずに、みなさまの笑顔と感動のために、一日も早い成功に向けて、努力していきたい所存です。

これまで、日本国内、とくに関西圏では手に入らなかったような希少品種、しかも、育てがいのある、園芸の醍醐味を最大限に味わえる品種を40年の経験で厳選し、そのこだわり栽培法(活着しやすく、化学物質に敏感な人にもやさしい農薬不使用栽培)の自園育成苗が能勢で入手できるようになるかもしれません。園芸が好きな家族が、里山へ小旅行のドライブに行く目的のひとつになるようなガーデンの造成に努めていますので、ぜひ、今春の開園を心待ちにしておいてください。

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