岡山県は3日、家禽飼養場での事例としては今季初となる高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の感染が発生した同県倉敷市の別の採卵養鶏場で、2例目の鳥インフルエンザの感染が発生したと発表しました。岡山県の発表によりますと、鳥インフルエンザが発生したとみられる養鶏場は、1例目が発生した倉敷市真備地区の養鶏場の南南西側約3kmの同市玉島地区にある、同地域に本社を置くバタリーケージ養鶏場とみられ、飼養規模は、1例目の約3倍に及ぶ約51万羽です。この速報を配信した時点では、遺伝子検査が行われており、遺伝子検査でHPAIが確認された場合、直ちに全数殺処分などの防疫措置が行われることになります。(遺伝子検査の結果やHPAIが確定した後の動きなど、岡山県による新しい情報が入り次第、追って別記事として配信予定です。)羽数では、2年前の同県美作市の約64万羽よりも少ないですが、美作市での事例は、育すう養鶏場で、ひな鳥が多かったため、岡山県は、殺処分や焼却は羽数の割には早く終わったと発表していました。この倉敷市での事例では、成鶏の養鶏場とみられ、HPAI確定の場合の防疫措置の実質的規模は美作市の事例と比べて同等か、より大規模なものとなる可能性があるとされます。
10万羽超級のHPAI禍は激甚災害
岡山県は、1例目の約17万羽の規模で自衛隊に災害派遣を要請しており、2例目はその3倍の規模になることから、遺伝子検査でHPAIが確定された場合は、再び自衛隊に災害派遣要請をすることを、同県のHPAI対策本部会議で決定しています。自然災害でも、自衛隊に災害派遣を行うような場合は、激甚災害といわれる規模であるのが通例であることから、10万羽超級のHPAIも実質的には「激甚災害」だといえます。EU圏のように、ケージフリーの小規模分散型(数百〜数千羽規模)の採卵養鶏場の場合、有事の際にも激甚災害化することがないことを考えると、日本特有の経済性優先・動物福祉軽視(ほぼ無視)のバタリーケージ飼養(数万〜10万羽以上)の問題がいかに大きいかがおわかりいただけるでしょう。
岡山県による公式発表
https://www.pref.okayama.jp/kinkyu/817881.html
山陽新聞の報道資料(岡山県提供)
https://www.sanyonews.jp/photo/detail/1326322?pid=3904968
(上の1枚目・2枚目の写真と必ず比較してください。)
「食べて安全か」よりも大切なことがある
とっさの有事で気が動転し冷静さを欠いているからか、高病原性鳥インフルエンザをめぐっては、食品(鶏卵・鶏肉)としての安全性上の問題や、その派生問題としての風評被害問題ばかりが注目されがちですが、これは、反知性的でSDGs時代にはそぐわない行政の悪しき慣行です。なぜ日本は、EU圏で克服できていることが克服できないのでしょうか。日本は、毎年100万羽以上もの鶏を虐殺してもそれをHPAI防疫だから仕方がないと言い訳する、かくも愚かな国なのでしょうか。植物性食品と比べて温室効果ガスの発生量が多いことや、動物愛護・生命倫理上(飼養法・と畜・有事の際の対応等)の問題、消毒剤や殺虫剤などの有害化学物質の多用による環境問題、輸入飼料価格の高騰による養鶏の経営(経済)上の問題など、養鶏における持続可能性上の問題は数多くあります。行政がしきりに訴えるような、食品安全上の議論や風評被害の問題ばかりに気を取られるのではなく、持続可能性の観点から養鶏の問題を総合的に考察し、養鶏産物そのものを摂取しないことも視野に入れたうえで、養鶏産物との付き合い方について、一人ひとりが主体的かつ冷静に考え、行動に反映することが求められます。
コメント