【緊急のお願い】昭和教育文化忘却の危機!日本一の里山にある木造校舎を守ってください!

兵庫県川西市黒川地区。都市部や住宅地から至近にして、美しい棚田の景観が今もなお残る「日本一の里山」として親しまれているこの地域のシンボルともなっている木造校舎があります。川西市立黒川小学校(現在、休校中;現在は黒川公民館として活用)です。

川西市立黒川小学校(休校中;現在は黒川公民館として活用)

伝統工法で建てられた木造の教育施設がもつ重要な意味

海外発祥のツーバイフォー工法や建築者の都合でどうにでもなるような鉄筋コンクリート造の建築があたりまえのようになっている現在にあって、和大工の正直で高い技術が必須の日本伝統工法の(人が居住・公共的利用をするための)木造建築というだけでも、今日では、非常に高い文化財的価値があるものですが、ことに日本伝統工法の学校というものは、日本の匠(ものづくり)の精神を継承していく教育の場ということで、教育史上の特別な意味をもつものです。昭和40年代ごろまで、日本の小・中学校は、日本伝統工法の木造校舎を学び舎とし、無垢の木の机といすで授業を受けることは、ごく普通のことでした。木造校舎には、こどもたちの分泌物の元気なにおいが木のにおいと渾然一体となって、木の学校ならではの、元気になりながらも落ち着く雰囲気を醸し出し、一定の秩序のなかで、人とひととの肌がこすれあう集団生活のよろこびを日々実感し、共同体(コミュニティ)意識の形成に役立ってきました。

ところが、記者が生まれる頃の昭和後期には、日本伝統工法の木造校舎は次々と取り壊され、今日のような、ぬくもりを感じない鉄筋コンクリート造の学校に次々と置き換えられていったのです。昭和後期の頃は、ベビーブームによる児童人口の急増に伴う増築という意味合いもありました。しかし今日では、少子化で新興住宅地にある鉄筋コンクリート造の学校でさえも統廃合の嵐で、そんな状況にあって、ついに、黒川小学校にも、休校から45年になる今、廃校の危機に直面しています。学校が鉄筋コンクリート造に置き換えられてから、いじめやハラスメント、不登校の問題が社会問題化してきたことも否めません。そもそも鉄筋コンクリート造という無機質なつくりが、日本人の体質や精神には合わず、無理がでてきたというのもその重要な理由のひとつです。こどもの多動傾向や教職員のストレスが、教室の木質化で改善したということに関する調査結果もあるほどです。このことから考えても、正直で精緻な日本伝統工法の木造校舎がもつ教育施設としてのポテンシャルがいかに高いか、それも、他にはないかけがえのないものであることがおわかりいただけると思います。

木造校舎は教育利用に限ること、転用は絶対に許すな!

前述のように、日本伝統工法の木造校舎は、日本のこころを継承する教育の場として活躍してきたもので、まさに、日本のこころの継承の象徴といえる特別な意味を持つ建築物です。ところが、少子化で全国的な廃校が相次いでいる今日では、廃校後の校舎を、その建築様式の種別を問わず、教育以外の目的で転用されるケースが後を絶ちません。人材派遣業大手のパソナグループ(東京都千代田区)が兵庫県淡路市(淡路島)の廃校を利用した「のじまスコーラ」は有名ですが、これは、観光レストランであり、もともとの小学校の面影はないほどです。全国ではそれだけではありません。記者は、これまでに東北地方でも、廃校活用のひどい現状を何度も目の当たりにしてきました。野菜工場、食品工場、サーバー(コンピュータ)置き場など、もともとが学校だったということを全く考慮せず、場所を使えれば何でもありという現状です。ここまでくれば、こどもの健全育成のあり方を軽視するという社会病理のあらわれだといってもよい状況です。

廃校とはいえ、学校は、何十年も、長い学校では100年以上もの間、人を育て、強靭な日本の社会づくりを支えてきた、地域の人々の魂が込もった、特別な意味のある建物です。今日の無味乾燥で、しばしばいじめや不登校問題の舞台にもなる鉄筋コンクリート造の学校とは異なり、木造校舎には、木造校舎でしか感じられない、季節の風や、それとともに気づきあげてきた、日本人のこころの奥底にある「よい記憶」を思い起こさせる力があります。それは、現代のこどもでもあてはまります。これからのこどもたちが「木造校舎のよさを知ることなく大人になっていく」、黒川小学校の廃校(川西市指定管理者による管理移行)は、そういう危機に瀕することでもあるのです。

最悪のシナリオは、正式に廃校になり、指定管理者による管理に移行後、(前述のパソナグループのように、)そのような意味を知らない指定管理者が選ばれた場合です。指定管理者は、所有者である自治体(川西市)が指示する範囲内においては、基本的に自由裁量で使うことができるとみられます。その際、指定管理者が「教育以外の用途で使いたい」となった場合、場合によっては、「のじまスコーラ」のように、もともとは小学校だったことを忘れさせるほどのリフォームやリノベーションを施すのは必至とみられます。なぜなら、学校というのは、多くの業態にとっては全く異質な空間であって、やりたいことをするには、必ず改変することになるからです。そのようになることは、たとえ建物を取り壊さなかったとしても、「木造校舎独特の日本の古き良き文化」を人々から忘れさせることになり、教育史上の重大な損失になります。廃校になったとしても、そのような用途変更は、絶対に許してはなりません。川西市にあっては、黒川小学校の木造校舎の文化が失われるということは、ただ単に川西市の損失だけではなく、日本全体の損失なのだという意識をもっていただきたいものです。なお、正式に廃校にするかどうかの決定は、本日の川西市議会で行われるということです。

銀鮒の里学校は、川西市立黒川小学校を、建築物だけではなく、それに付随する教育史的無形文化財も保護するために、これからもできる限りの活動を進めてまいります。一度、取り壊されたり、心無い指定管理者にあたり、用途変更されたりすると、もう二度ともとの状態に復活させることはできません。なんとかしなければ、と少しでも思う方、ぜひとも力を貸していただけないでしょうか。お助けいただけないでしょうか。市民請願の署名運動なども考えています。私たちの保全運動にご関心を持たれた方は、ぜひ、銀鮒の里アカウントを取得いただき、活動に加わってください。日本のかけがえのない有形無形の財産を後世に残すための活動へのご理解ご協力をお願いします。

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コメント

  1. […] 【資料】旧川西市立黒川小学校の昭和教育文化保全に関する当メディアの記事https://media.funaan.org/sustainability/2022/03/25/%e3%80%90%e7%b7%8a%e6%80%a5%e3%81%ae%e3%81%8a%e9%… […]

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