【科学リテラシー】家禽卵の生食は危険?食品安全委員会のアナウンスは半信半疑で、鳥インフルエンザの真実

よほど怪しい場合でしか見つからないAI感染

これが現実です。

鳥インフルエンザの疑い事例は、明確な症状が現れた場合にしか、家畜保健衛生所には通報されません。言い換えれば、実際には感染していたとしても、無症状の場合は、気づきようがありませんので、通報されないままとなります。もし、病原性の高低に関係なく、正確かつ、見逃しなく完全にAI感染に気づこうとすれば、少なくとも、家畜保健衛生所の簡易検査で用いられるA型インフルエンザ簡易検査キットで、1羽ずつすべての家禽について、毎日検査する必要があるわけですが、100万羽以上の巨大養鶏場もあるわけで、そのような状況下では費用面でも労力面でも非現実的であり、(たとえ1,000羽程度の規模であっても)明らかに不可能です。低病原性AIに感染していたり、感染していても無症状の場合は見逃されることになるわけで、食品安全委員会や地方自治体が訴える「我が国の現状において、家禽の(生)卵を食べて鳥インフルエンザに感染する可能性はありません」というのは、単なる願望論であって、科学的には不正確であると割り切るべきです。

「加熱すれば安全」は正しいですが、日本では…

養鶏などの家禽養鶏をめぐっては、日本では、諸外国ではナンセンスともいわれる特殊な事情があります。工業的畜産もそうですが、よくいわれることに、卵の生食習慣があります。卵も肉も、たしかに加熱すれば、食品安全委員会がいうように、仮にAIウイルスが存在していたとしても完全に変性・失活し、食べてしまったとしても安全でしょう。しかし、生食の場合は話は別です。たしかに、実際はウイルスが含まれているケースのほうが稀でしょうが、だからといって「可能性ゼロ」と言い切るのは早計です。「加熱すれば安全」だからといって、「生食も安全」とはいえません。破壊的検査でもしないかぎり、実際にAIウイルスが含まれているかどうかは、誰にもわからないのです。含まれていても、検査しない限り、気づきようがないのです。家禽の生食を思い立つ前に、踏みとどまって考えてください。「実際にはAIウイルスが含まれているかもしれない。それでも、誰にも真実はわからない。それでも食べますか」、と。

AIウイルスに気づかなかった場合の最悪シナリオ

実際にAIウイルスが含まれていた家禽の生肉や生卵を食べてしまった場合には、最悪の場合、どのようなシナリオが考えられるでしょうか。鳥インフルエンザは、ヒトを含む哺乳動物にも感染しうる人獣共通感染症であることは、今や誰しも知るとおりです。鳥インフルエンザウイルス自体は、国や自治体が願望論として訴えるように、感染力は弱く、感染鳥からの直接感染の可能性は低いかもしれません。しかし、これは、感染しないという意味では決してなく、一度でもヒトを含む哺乳動物に感染する履歴を経ると、ヒトを含む哺乳動物に対する感染力も病原性も強くなる可能性があることもわかっています。このことを考慮すれば、生卵や鳥刺しを食べ続けて、ひどい風邪のような症状を発症し、気づいたときには生死をさまよう状況になっていたという事態に至る可能性も否定できないわけで、とくに、家禽を生食する特異な文化がある日本では、とくにリスクが高いといえるでしょう。とくに、工業的畜産で生産されるケージ卵を、とくに冬季に、TKG(卵かけご飯)やすき焼きで食べるような行為は、棺桶に足を突っ込む覚悟がある「猛者」と揶揄されて然るべきでしょう。現在のところ、鳥インフルエンザ感染によるヒト致死率は、約50%(WHO把握数ベース、2023年までの時点)とされています。

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