【独自】ヤマザキパン、乳化剤・臭素化合物添加とクロロプロパノール類生成との因果関係の検証結果を学会誌に投稿、一般公開せず

ヤマザキパン問題

日本で唯一、臭素化合物添加の「臭素パン」を製造するヤマザキパン(東京都千代田区)が実施した、ヤマザキバン生地に含まれる食品添加物由来物(乳化剤や臭素(臭素酸カリウムのことか?))とクロロプロパノール類(CPs)生成との因果関係の化学的検証の結果に関する論文について、学術雑誌である日本食品科学工学会誌(発行機関:公益社団法人 日本食品科学工学会(茨城県つくば市))において、2023年7月20日に投稿受付があり、2024年5月1日付で受理されていたことが、FMGの調べでわかりました。FMGでは、この論文の投稿受付日から起算して約1年5ヶ月前にあたる2022年2月10日付で、ヤマザキパンのクロロプロパノール類に関してのリスク認識の問題について、ヤマザキパンに対してヒアリングをおこなうとともに、化学的予測による危害未然防止の観点からの記事を配信していました。(詳細は、2022年2月10日付配信記事を参照)発行元の公益財団法人 日本食品科学工学会は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)内に事務局を置く、食品会社の研究所関係者や農学系などの大学関係者などによる学術団体です。抄録によりますと、この論文は、2004年に英国食品基準庁が発表した、「パン生地にDATEM(グリセリンジアセチル酒石酸エステル脂肪酸エステル)などの乳化剤を使用すると、パン中の3-MCPD濃度が高くなる」というエビデンスに対する反論として投稿されたものであり、その反論を立証する結果を得たことの報告とみられます。しかし、抄録では、「臭素」が具体的にどのような化学的形態であるかがわからないなど曖昧な点もある(隠蔽の意図か?)うえ、一度英国の政府機関が立証した結果に反する結果を覆す結果を得るのは容易いことではないこと、日本の農林水産省も、パンで最大値で1kgあたり0.57mgの3−モノクロロプロパンジオール(3-MCPD)が検出されている事実を把握していることもあり、実験条件には疑問が残ります。この論文は、この記事の配信時点においては、当該学会の会員のみが閲覧できるようになっており、一般公開はされていません。このことからもヤマザキパンは、消費者に向けたリスクコミュニケーションに真摯に取り組む姿勢がみられず、依然として隠蔽体質が根強いことがわかります。

また、ヤマザキパンの「お客様とのコミュニケーション」(下の写真参照)では、オペレーターの化学力不足によって、そもそも化学物質のリスクコミュニケーションができず、このような杜撰な実態が意図的に放置されていることもわかっています。

化学の専門家とのコミュニケーションを求めると「わからないです」と泣きながら拒否、それが、ヤマザキパンの「お客様とのコミュニケーション」だ(ヤマザキパンの公式ウェブサイトより)

※α-クロロヒドリン、3-クロロプロパン-1,2-ジオールとも呼びます。

消費者はどのように受けとめ対応すべきか

以前の記事で、学会誌に学術論文が投稿されたからといって、鵜呑みにしてはならず、科学的に熟考すべきであると述べました。保身に走るメーカーの学術論文ではありがちなこととして、ラボレベル(実験室的)では設定できても、実用シーン(製造現場での加工、家庭や厨房での調理など)では再現されにくいような非現実的な条件を恣意的に設定し、その限定的な論文上の条件に限って実現できることでもってエビデンスとするといったことがよくあります。これでも、論文に記載された条件では再現できるわけですから、非現実的であっても、それがエビデンスだと主張しても、論文上ではウソではありません。そこが、学術論文のエビデンスを鵜呑みにすることの盲点なのです。

このヤマザキパンのエビデンスの周辺には、反論のきっかけとなった英国食品基準庁のエビデンスのほかにも、ヤマザキパンの反証に懐疑を抱くに足るだけの、蛋白加水分解物や加工食品におけるクロロプロパノール類(CPs)生成に関する多くの化学的事実があります。前に指摘したように、抄録の「臭素」という曖昧な表現も、その懐疑をより強くするものです。というのも、他の企業では使用しないような強酸化剤の臭素酸カリウムを添加したり、化学的解析を困難にするほどの数多くの食品添加物を併用するなど、ヤマザキパンの製造条件についていえば、とくにCPsが生成しやすい条件が重なると考えられるためです。

各消費者においては、パンを買うときは必ずヤマザキパンを買わなければならないというわけではありませんし、他のメーカーや街のパン屋のパンも選べますし、自分で手作りパンをつくることもできます。エビデンスをでっち上げる以前に、ヤマザキパンという企業の体質も、購買の意思決定を踏みとどまるに足ります。ヤマザキパンは、自社にとって都合がよいことはいくらでも公表しますが、消費者が知るべきことの多くは隠蔽します。前述の考察を踏まえても、このヤマザキパンの論文の信憑性には多くの疑問が残ります。この記事は、ヤマザキパンの不買を推奨しても、強制するものではありませんから、実際にヤマザキパンを買うかどうか、その最終的判断は、各主体に委ねられます。各自でご注意ください。

【博士(農学)の執筆者によるドクターズ・コンテンツ】

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