フッ素化学・空調機器大手のダイキン工業(大阪市)の主要な生産拠点、同社淀川製作所が立地する大阪府摂津市の地下水から、発がん性などの健康影響も懸念されている難分解性の多フッ化アルキル化合物(PFAS)が検出されたことを受け、京都大学と市民団体で構成する調査チームは、ダイキン工業の元従業員の居住地など、大阪府と兵庫県の約30の自治体における血液検査を行いました。その結果、血液検査を行った1190人のうち約3割の人から、米国の学術機関が設定した指針値(20ng(ナノグラム;ナノは10の-9乗)/mL)を超える血中PFAS濃度が確認され、ダイキン工業の元従業員の中には、同指針値の30倍を超える血中PFAS濃度が確認された人もあったということです。
ダイキン工業の公式ウェブサイトによりますと、ダイキン工業では、昨今の有機フッ素化合物をめぐる環境問題に対応するために、非フッ素系の素材の開発も進めているとしながらも、現在でも同社の主力事業のひとつであるフッ素化学事業の生産品目として、工業用の有機フッ素系液体やフッ素樹脂の開発や生産に取り組んでいるということです。有機フッ素系界面活性剤のPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸(塩))やPFOA(パーフルオロオクタン酸(塩))は現在、法規制により使用されていませんが、過去には、同社の淀川製作所などで使用されていました。
数十年後に深刻な影響が発覚するPFAS/OFCs問題、日本の楽観体質に警鐘
今回明るみになったPFAS問題は、おもにPFOSとPFOAに焦点が当てられていますが、PFAS問題の全体像は、それらの化合物だけではないことは、これまでにもFMGで報じてきたとおりです。例えば、新規殺虫剤として、近年、抵抗性害虫対策として急速に普及しつつある、三井化学クロップ&ライフソリューションが開発したブロフラニリド(下の構造式参照)は明らかにPFASとしての分子構造を持っていますし、自発的蒸散性を謳った殺虫剤の成分の多くは、PFASの定義には該当しにくいものの、有機フッ素化合物(OFCs)の定義にあてはまるものとして、トランスフルトリンやメトフルトリンといった成分が使用されている実態があります。
FMGでは、これまでにも、ブロフラニリドが半永久的に分解されないことが明らかになっているPFAS(多フッ化アルキル化合物)としての構造を持っているにもかかわらず、農林水産省(農薬関係)や厚生労働省(防疫用殺虫剤(医薬品)関係)の審査を難なく通過している実態を指摘、各省にも、ヒアリングを行ってきた経緯があります。FMGは、ブロフラニリドの問題をPFAS問題として伝えている数少ないメディアのひとつですが、「このまま無策のままで、PFASであるブロフラニリドの普及拡大が続けば、早ければ10年以内で、現在のPFOSやPFOAの二の舞として大問題になることは明らかだ」として、警鐘を鳴らします。ブロフラニリドは、ドラッグストアなどで買える雑貨品・防除用医薬部外品の長期持続型殺虫剤として普及が急拡大しているほか、PCO業務用の防疫用殺虫剤(第2類医薬品)としても、外食産業の厨房や食品加工工場に残留処理で使用される新規ゴキブリ駆除剤としても急速に普及しつつあり、とくに外食や加工食品を通じての微量・長期間の経口摂取で問題化するのではないかと危惧されます。
このようにFMGでは、化学をキーアカデミアとするメディア機関の強みである、他のメディアが報道できない、化学的視点に深く切り込んだ報道を行うとともに、記者と直接対話でき、市民運動に速やかにフィードバックできる強力なサービスを、誰にでも無償で提供できるようにしています。これらの強力なサービスを利用するには、銀鮒の里アカウントでのログインと積極的なコミュニケーションへのアプローチが必要となります。少しでも市民運動にご関心をお持ちいただき、現状を変えていきたいという意思をお持ちでしたら、すぐに銀鮒の里アカウントでご参加ください。
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